【NovaSeq/HiSeq/NextSeq/MiSeq】イルミナの次世代シーケンサーの原理と特徴
イルミナ(Illumina)社は遺伝子解析技術で世界的に有名な企業であり、イルミナの次世代シーケンサーは圧倒的なシェアを誇っています。本記事では、イルミナの次世代シーケンサーの原理や特徴について詳しく紹介します。
なお、イルミナの次世代シーケンサーにも多くの種類があります。NovaSeq、HiSeq、NextSeq、MiSeq等の違いについても解説します。
イルミナの次世代シーケンサーの原理
イルミナの次世代シーケンサーではSequence by Synthesis(SBS)テクノロジーが用いられています。 まず、シーケンスしたいDNA配列を断片化し、DNA断片に対してアダプター配列を付加します。 フローセルと呼ばれる基盤上には、アダプター配列と相補的なDNA配列が埋め込まれており、これによりDNA断片はフローセルに結合します。 フローセル上でDNA断片の増幅を行うと、同一DNA断片が集まったクラスターが形成されます。 この状態で、蛍光標識したヌクレオチドを1塩基ずつ伸長させていきます。 この様子をカメラで撮影することによって、大量のクラスターの塩基配列を並列に特定します。
さらに詳しい説明はこちらをご覧ください。
イルミナの次世代シーケンサーの特徴
イルミナの次世代シーケンサーの特徴は1度に大量のデータが出力される点です。 従来のサンガー法はもちろん、PacBioやNanoporeといった他の次世代シーケンサーと比較しても多くのデータが得られます。 その分、データあたりのコストは抑えてシーケンスが可能です。 読み取りの精度についても、PacBioやNanoporeと比較して高い値になっています。
ただし、得られる配列のリード長(解読配列長)は〜数百塩基程度と短くなっています。そのため、リピート領域やGCリッチな領域を解析することは苦手としています。
また、イルミナの次世代シーケンサーの特徴として、DNA断片の片側のみをシーケンスするシングルエンドとDNA断片の両端を読み取るペアエンドの2つの読み方があります。 ペアエンドでシーケンスした場合には、塩基配列がペアになって出力されます。
イルミナの次世代シーケンサーの応用
全ゲノムシーケンス解析(WGS)、全エクソームシーケンス解析(WES)、de novo ゲノム解析、RNA-Seq解析、細菌叢解析等様々な解析に応用されています。
全ゲノムシーケンス解析(WGS)や全エクソームシーケンス解析(WES)において構造変異のように大きな変異を捉えたい場合や、de novo ゲノム解析のようにアセンブルを行う場合には、イルミナの次世代シーケンサーのようなショートリードはあまり向いていません。 そのため、PacBioやNanoporeのようなロングリードを用いることが理想です。 ただし、ロングリードはデータあたりのコストが高いため、実際にはショートリードが使われることもあります。
イルミナの次世代シーケンサーも含めた次世代シーケンサーの応用についてさらに詳しい説明はこちらをご覧ください。
イルミナの次世代シーケンサーの種類
イルミナの次世代シーケンサーのうちいくつか紹介します。
出力データやリード長に違いはありますが、得られるシーケンスの品質は大きく違いはないと言われています。
NovaSeq(NovaSeq 6000、NovaSeq X)
ヒト全ゲノムシーケンス(WGS)等の大量のデータを必要とするアプリケーションを実施する際によく利用されます。 次世代シーケンスの受託解析を行っている企業や大規模な研究拠点はNovaSeq 6000を保有していることが多いようです。
HiSeq(HiSeq1000、HiSeq 2000、HiSeq 2500、HiSeq 3000、HiSeq 4000、HiSeq X)
HiSeqシリーズは1000ドルゲノムを達成する等、ヒトゲノムの研究に大きな影響を与えてきた機器ですが、現在は製造を中止しておりNovaSeqへの移行が進んでいます。
NextSeq(NextSeq 550、NextSeq 1000、NextSeq 2000)
ヒト全ゲノムシーケンス(WGS)と比べて少ないデータ量で済む、エクソームシーケンスやRNA-Seq等のアプリケーションを実施する際によく利用されます。大学の共同利用機器として配備されていることも多いようです。
MiSeq
エクソームシーケンスやRNA-Seq等と比べてさらに少ないデータ量で済む、ターゲットシーケンスや腸内細菌叢解析等のアプリケーションを実施する際によく利用されます。 NextSeqよりもさらに出力データ量が少なく小回りの利くシーケンサーです。大学の共同利用機器として配備されていることも多いようです。
最大出力および最大リード長は以下のようになっています。
最大出力 | 最大リード長 | |
MiSeq | 15 Gb | 2 × 300 bp |
---|---|---|
NextSeq 550 | 120 Gb | 2 × 150 bp |
NextSeq 1000/NextSeq 2000 | 360 Gb | 2 × 150 bp |
HiSeq 2500 | 1 Tb | 2 × 150 bp |
HiSeq X | 1.8 Tb | 2 × 150 bp |
NovaSeq 6000 | 6 Tb | 2 × 250 bp |
NovaSeq X | 16 Tb | 2 × 150 bp |
イルミナの次世代シーケンサーの受託について
イルミナの次世代シーケンサーの価格は非常に高額です。次世代シーケンサーを利用できる環境がない場合には、受託を依頼することが第一選択肢になるかと思います。
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