遺伝子発現解析とは

遺伝子発現とは、DNAがタンパク質などの機能を持つ遺伝子産物に変換される過程のことを言います。 遺伝子発現解析は、細胞や細胞群において遺伝子がどれくらい発現しているかを調べる解析です。 機能を持つ最終的な遺伝子産物は多くの場合でタンパク質ですが、遺伝子発現解析では一般的にタンパク質へ翻訳される前のmRNAをターゲットとすることが多いです。 これはmRNAがタンパク質に比べると簡単に測定ができることと、mRNAとタンパク質の量には一定程度の相関関係があることからです。

遺伝子発現解析には、ある特定の遺伝子を対象とするノーザンブロットやリアルタイムPCR等の解析と、遺伝子の発現を網羅的に調べるマイクロアレイやRNAシーケンス(RNA-Seq)等の手法があります。 転写物(トランスクリプト)の総体を「トランスクプトーム」と呼ぶことから、遺伝子の発現を網羅的に調べる手法はトランスクリプトーム解析とも呼ばれます。 本ページでは、網羅的な遺伝子発現解析法であるマイクロアレイやRNA-Seqについて解説します。

マイクロアレイ

マイクロアレイでは、基盤上にDNA断片(プローブ)を配置して、mRNAを逆転写酵素でcDNAに変換したものとハイブリダイゼーションさせることで、遺伝子の発現量を網羅的に測定します。 プローブを設計するためには全遺伝子の配列情報が必要となりますので、マイクロアレイではゲノム配列が決定されていない生物種は対象とできません。 また、主要なモデル生物についてはアレイが手に入れやすいですが、それ以外の生物種では受注製造のため時間がかかったり、場合によっては自分でプローブを設計する必要があるかもしれません。

マイクロアレイは、Thermo Fisher Scientific(旧Affymetrix)のGeneChipとAgilent TechnologiesのSurePrintが有名です。

マイクロアレイの原理

マイクロアレイの原理

RNA-Seq

RNA-Seqでは、RNAを断片化しcDNAに変換したものを次世代シーケンサーでシーケンスすることで、遺伝子の発現量を網羅的に測定します。 マイクロアレイと違い事前にプローブを設計する必要はありませんので、生物種に制限はありません。

RNA-Seq解析の流れ

RNA-Seq解析の流れ

また、新規転写産物を検出したり、SNVやIndel等の変異を検出したりすることも可能です。

新規転写産物の検出

新規転写産物の検出

デメリットとしてRNA-Seqの方が価格が高いという点がありましたが、近年では価格がほぼ変わらなくなっており、RNA-Seqが選択されることが増えています。 RNA-Seqには、イルミナの次世代シーケンサーが多く使われます。

参考